ブリッジコンテストで座学ではわからない感覚を身につけよう
3年生の授業で橋の模型を作って壊す授業をしています。本来は構造力学にちなんだ実験枠なのでしょうが、ここは純粋にモノがどう壊れるか、どうすれば壊れなくなるかを体験する場と割り切っています。モノを作る経験がほとんどない学生さんたちなので、難しい計算は無しでまずは作って壊してみて、壊れ方を見ながらどう改善すればよいか考えてもらっています。アドバイスもしますが、実際に目の当たりにするとたいていは気づいてくれます。これが大切。
2mm角のヒノキ材、ケント紙、接着剤、たこ糸を好きなだけ使えますが、重さの制限は60グラムです。2mm角材では細すぎるので、貼り合わせて太い断面を作るところから始めます。ただし、太くすると重くなりますから、力のかかり具合を考えて適切な太さを決めるのがポイントです。できあがったら60センチ間隔の橋脚に載せ、中央を下向きに引っ張り、その大きさを競います。上手くやれば20~30キログラムは保ちます。ただ、最初からそうはいきません。
実際にやってみると、部材が折れ曲がる、全体が横に倒れる、継ぎ目が外れるといったことで終わりを迎えることが多く、耐えて耐えて全体がバキッと壊れることはまずありません。これらは部材に引張や圧縮が作用したらどうなるかで説明できますが、これがなかなか難しい。
例えば、ゲンコツくらいの石があったとします。これを引き寄せるなら紐で縛って引っ張ればよく、紐が外れさえしなければ難しくはありません。逆に石を押すなら棒で突っつくだけと一見もっと簡単です。ただ、棒が細すぎれば折れ曲がりますし、中心を押さないと石はくるくる回ってしまいます。つまり、引張と圧縮は力の向きが逆なだけですが、作るときの注意点はまるで違います。このあたりの感覚は、やはりモノを触らないと実感できないことでしょう。
このことは、実際の構造物でも当然ながら活かされています。引張材では両端がしっかり固定されていますし、圧縮材では自身が太くなる傾向があります。そういう目で、まちで見かけた構造物をを見てみるとおもしろいですね。